支配は暴力

 これまで連載で、ドメスティックバイオレンス(DV)について、相手を罵倒したり殴ったりなど、一目でDVと分かりやすい事例をご紹介してきました。

 「わが家はこんなにひどくないからDVではないな」と思った方もいらっしゃるかもしれません。でも私がお伝えしたいのは、DVは意外なほど簡単に行ってしまう暴力ということです。

 夫婦どちらかの考え方を相手に押し付け、恒常的に相手を相手を支配する関係。言い換えると「嫌なことを嫌と言えない関係」がDVなのです。支配は暴力です。

 例えば、その日の夜は家庭で外食する予定だったとしましょう。昼間に急に仕事が入って疲れた夫は「きょうはやっぱり外で食べたくない」と言い出します。そのときに「おまえたちだけ行ってくればいいだろう」と不機嫌に言われたらどうでしょう。出にくくて、外食をやめます。そのときに「僕は行くなとは言っていないよ」と言われてもー。それは相手を支配していることになりませんか。

 一方、穏やかな口調で「ごめん。僕はしんどいからやめておくけど、行っておいでよ」と促してくれたら。出掛けるかどうか、選べますよね。

 DV加害者の夫や被害者の妻たちの話を聞きながら、いつも感じています。夫婦の間でものごとを自由に選択できる言い方をしているかどうかが、いかに大切かー。

 互いに譲ったり、譲られたりして折り合いをつけていくのが、健全な夫婦関係ではないでしょうか。どちらかの意見しか通らない関係は、破綻をきたすリスクがあります。

 前にも書きましたが、夫婦は決して「一心同体」ではありません。「二心二体」なのです。

 

☆事例は事実を基に再構成しています。

クロッケ代表・黒瀬茂子(広島市)