もう一度、一歩

 ドメスティック・バイオレンス(DV)がどうすればなくなるかを考えてきたこの連載。最後に、DVで別居した夫婦が、やり直すため一歩を踏み出した例を紹介しましょう。

 夫(35)と妻(33)が共働きで、3歳の長女を育てている家庭。夫は、自分の思い通りにならないと口をきかなかったり殴ったりを繰り返し、妻は娘を連れて実家に帰ってしまいました。

 困り果てた彼がクロッケを訪れたのは、1年前。真面目に通い続け、自分の行動を客観的に見つめる努力を重ねていました。

 離れて暮らし、妻も冷静さを取り戻したのかもしれません。先日、「そろそろ一緒に暮らしてみようと思うのですが・・・」と妻から相談がありました。ただ同時に「うまくやっていけるのか、すごく不安」とも話します。

 私が提案したのは具体的な「同居のルール」を作ってもらうことでした。彼女が書いた内容はー。

 「おはよう」「いってきます」とあいさつはちゃんとする▷感謝の気持ちを持つ▷2人の時間をつくる▷自分が見たいテレビドラマは1人で見る▷義母が作る料理と比べない・・・。その数、20項目。

 こうした「同居のルール」がなぜ必要なのか。彼女の夫は「DVはよくない」と思うようになりました。でも、人はガラリとは変われません。家庭でDVでない行動を実践するには、具体的な最低限度の目標が必要なのです。

 まずは1泊2日のお泊まりから出発です。妻は「夫がまた豹変するのではないか」と思い、夫も「また同じことをしたらどうしよう」と恐れています。無理に長い時間、一緒に過ごすことはストレスになるからです。

 少しずつ、互いに歩み寄っていけたら。もう一度、夫婦のスタートラインに立つような気持ちで。ずっと一緒に暮らせる日が来るよう、私も応援しています。=おわり

 

☆事例は事実を基に再構成しています。

クロッケ代表・黒瀬茂子(広島市)