親の顔色を見る子ども

 ドメスティックバイオレンス(DV)は、パートナーとの問題にとどまりません。子どもにも大きな影響を及ぼします。

 クロッケを訪れた会社経営の男性(40)は「僕は子どもを大事にしてきました。一度も手を上げたこともありませんし、怒鳴ったこともありません」と、自信満々で話しました。

 しかし妻(38)は「確かに子どもの前では、我慢しているようです。でも狭い家です。私に対する怒鳴り声や物が壊れる音を子どもたちは聞いています。最近、子どもが、親の顔色を見ながら話をする気がします」と、不安を感じていました。

 そのことを彼に話すと、「なぜですか。僕は子どもをかわいがっているのに!」と納得しませんでした。

 本当にそうでしょうか。皆さんの子どもの頃を思い出してください。

 両親がけんかをしていたとき、不安になりませんでしたか。嫌な気持ちになりませんでしたか。そのきっかけが、自分のことだったら、責任を感じませんでしたか。

 子どもは小さいほど、一人では生きていけません。だから不安も非常に大きくなってしまいます。大人より子どもはずっと敏感なのです。

 中学生や高校生になれば「またやってるわ」とシビアに見るかもしれません。でも本当のところは、家族仲良くしたいはずです。

 会社経営の男性の子どもたちは、叱られることの少ない、とてもいい子だそうです。でもそれは、大人の顔色をうかがい、両親が自分のことでけんかしないよう常に神経をとがらせているからではないでしょうか。

我慢ばかり強いられては、心にひずみが生じます。そんな苦しみをお子さんにあたえたいですか。

 

☆事例は事実を基に再構成しています。

クロッケ代表・黒瀬茂子(広島市)